被害者が事故で入院した場合、身の回りの看護のために家族が自分の時間を削って、付き添うことが少なくありません。このような場合に、家族が付き添いした損害は、賠償されるのでしょうか。
ー 目次 ー
入院付添費用が認められる場合とは
(1)入院付添費について
近親者の入院付添費については、必要性が認められれば、多くのケースでは損害賠償額算定基準(いわゆる「赤い本」
)を基準に1日あたり6500円を目安として認められます。
付添の必要性については、医師の指示があれば、基本的には認められる傾向にあります。
医師の指示がない場合は、被害者の年齢や症状の程度等から、必要性が肯定されればこれが認められます。
家族が事故で入院すれば、お見舞いをするのは心情としては当然ですが、損害賠償という意味では付添の必要性がなければなりません。倫理的な問題ではなく、入院した被害者にとって家族の付き添いが生命・身体の維持のために必要といえるかということになるでしょう。
(2)付添費用が認められているケース
裁判例を分析すると、以下のような事例のケースで付添費用が認められています。
ただし、症状の程度、病院の看護体制、看護の内容等、個別具体的な事情によるので一般化はできませんが、ご参照ください。
・昏睡状態続いていた被害者に声掛け等を要していた事案
・完全看護体制の病院において多忙で対応が十分にされてなかった事案
・高次脳機能障害の看護のために、有給休暇を使用して看護した事案
・重大事故に直面した中学生の心情や精神状態を考慮して認めた事案
・右下肢・骨盤の骨折により紙おむつ状態が継続した事案
(3)付添費用が認められる要素
裁判例の傾向からは、病院の看護体制が不十分、被害者が低年齢、症状が重く自分では入院生活が困難、重い精神症状があるでは、入院付添費用が認められやすくなります。
他方で介護を必要としない単純なお見舞い程度の付添や病院の看護体制で十分に看護が足りているなどの事情では、否定的な方向に働くでしょう。
病院の看護体制が不十分であれば、家族がこれに代わって入院中の介護を行う合理性がありますし、被害者が小学生や幼児であると心情の安定性という観点から、必要性が認められやすくなるということでしょう。また、重い精神症状があり、自傷の恐れ・自殺企図があるケースなどでは家族の見守りの必要性は高まり、昏睡状態などの危険な状態にある場合、家族の声掛けなども必要性を高める事情になるかと思われます。
近親者の休業損害との関係
被害者の入院付添のために、家族が仕事を休んだ場合、休業したことに伴う損害が発生します。
これについては、基本的には付添費用として考慮されます。付添費用額で考慮される事例もありますが、高額な場合は職業付添人で足りるとして休業損害額をそのまま考慮しない考え方もあります。
近親者の入院付添費用については、医師の付添い指示があれば認められやすくなります。そのため、あらかじめ主治医に確認しておきましょう。
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