【むち打ち症の方向け】症状を正当に評価してもらうためのポイント

むち打ち症はメジャーでいてむずかしい

交通事故において負傷した場合の傷病は、「頚椎捻挫」「腰椎捻挫」のケースが圧倒的に多いです。
しかしながら、それだけの多くの方が負う傷病でありながら、奥が深く、傷病の程度を理解するのは簡単ではありません。その分、保険会社と争いにもなりやすいのです。

ー 目次 ー

むち打ち症は、他人には辛さを理解してもらえない。だからこそ医証が大事に。

(1)むち打ち症は自覚症状主体のため、評価されにくい

頚椎捻挫という傷病名を代表するむち打ち症は、本人が痛みを自覚していても、他者には理解されずに、辛い思いをされる方が少なくありません。
骨折した場合とは異なり、画像に客観的に、はっきりとした症状の原因が写っていないことが多いからです。
賠償をする側としては、本人が訴えている症状が本当なのか、それとも詐病などか判断がつきにくく、症状の程度について争いになります。
特に自覚症状主体のむち打ち症は軽くみられがちで、補償の際も評価されにくいのが実情です。

(2)むち打ち症という傷病名はない?

メジャーな名称として定着している「むち打ち症」ですが、正式な傷病名ではありません。
事故のときに首が前後にふられて「ムチ」のようにしなることから、むち打ち症と呼ばれているだけであり、医学的にはあくまで「頚椎捻挫」、「腰椎捻挫」、「頚部挫傷」等と診断されます。

(3)むち打ち症の症状と治癒経過

むち打ち症の主な症状としては、頚部痛、肩・背部痛、腰部痛、手足のしびれ、だるさ、脱力感などを訴える方が多いです。

一般的に「頚椎捻挫」は3か月以内に治癒すると言われています。
事故によって頚椎に負荷がかかり、軟部組織が損傷して炎症を起こすため、これが痛みを引き起こします。
受傷後48~72時間程度で炎症反応がピークに達するため、事故日は痛みを感じなくても、事故翌日に痛みが出てくるケースが少なくありません。
その後、急性期(1か月程度)に損傷した組織の周囲の腫張が減って、組織が修復されていき、亜急性期(2~3か月)に組織の機能回復がされるといわれています。

もっとも、組織の修復力が乏しく、慢性化してしまった場合、症状固定をして後遺障害等級認定を受けることになります。 このとき、自覚症状を出来る限り、具体的に説明しなければなりません。
どのような場面で症状が顕れるか、MRIなどで頚椎・椎間板の変化などが顕れていないか、神経学的検査での反応はどうなっているか、わずかな手掛かりでも集めていく必要があります。
自ら積極的に証明しなければ、後遺障害としては評価してもらえないのです。

主治医の先生の協力が後遺障害等級認定に必要になります。
医証収集には主治医の先生の協力が必要です。

事故状況時の衝撃や体勢なども、評価のポイントに。

頚椎に加わる外力を検討しよう

頚椎に加わる外力を考える上で事故状況も重要です。

どちらの方向から衝突されたか、どの程度の衝撃があったか、被害者の衝突時の体勢はどうだったか、無意識か意識下か、などの要素を考える必要があります。
そのため、当時の写真や実況見分調書など、資料を集めることも、重要なポイントになってきます。
車両が大破し、高額な修理代になっているケースでは衝撃の強さをあらわすために、車両の損害写真・修理見積書などが評価資料となってきます。最近では自賠責保険の後遺障害認定では、これらの書類はデフォルトで要求されているようです。
また、無意識下で衝突されて衝撃を受けた場合、筋肉を収縮させて衝撃に備えることができません。そのため、事故態様についてもどのような状況であったかを、具体的に説明していく必要があります。
その他にも、衝突時にどちらの方を向いていたか、ハンドルを握っていたかなどによって、身体にかかる外力の負荷が変わってきます。
これらをしっかりと説明していくことが、後遺障害認定や示談交渉・訴訟では重要になっていきます。

頚部損傷が発生する外力

追突被害を受けた場合、追突された車は前方に動き、乗車されている方の身体も前方に動きますが、頭が残ることで首が伸展して引っ張られます。そして、追突された車が止まると頭が前方にしなるように屈曲します。
そのため、この過伸展と過屈曲により、頚部の軟部組織が損傷し、炎症を発生させて疼痛を発生させることになります。
具体的には、首が引き延ばされたりすることで、頚部の筋肉、靭帯、関節包などが断裂したり、椎間板の損傷を招くということになります。
また、事故態様によっては、首が横に過度に曲げられる「過回旋」をすることがあります。これも、頚部の筋肉や靭帯を損傷を引き起こすことになります。
そのため、事故の被害にあったときに、どのような姿勢にあり、首はどちらを向いていたか、車はどのように動いたのかを分析することが重要なのです。

手にしびれが残っている場合の原因について

(1)神経根の圧迫がないか

人の体には頚椎の間に椎間孔という穴があり、ここに神経根といわれるものが通っています。
椎間板の老化などで椎間孔が狭くなっているところに、事故で外力がかかると、神経根の圧迫や損傷を受けることがあります。神経根は、特定の腕や手の部位を支配するので、圧迫された神経根を支配する部位にしびれの症状があらわれることがあります。事故により頚部を損傷すると炎症により腫脹し、神経根を圧迫して痛みや痺れが発生することになります。
事故直後から一貫して手にしびれが残存している場合は、これらの原因が影響している可能性があります。
その場合、主治医の先生にお願いして、神経学検査やMRIを撮影して診てもらいましょう。
むち打ち症は客観的な画像による証明が難しいですが、このようなケースでは残存症状を画像上説明できる可能性があります。

(2)神経学的検査の種類

神経学的検査として代表的なものに「スパーリングテスト」と呼ばれるものがあります。
これは、対象者の首を患側に傾けまわして、医師が上から頭を押さえつけることで、神経根の出口を狭めることで症状の発現を検査するものです。発現があった場合は、「Spurling (+)」などと診断書に記載され、有力な自覚症状を裏付ける証拠となります。
その他、「ジャクソンテスト」と呼ばれる神経学的検査もあります。
これも、医師が対象者の頭上に両手を置いて、下方向に圧迫する力を加えるもので、椎間孔を狭めて神経根の圧迫があるからをテストする方法です。同様に発現があった場合は「Jackson(+)」と記載されます。
ただ、これらのテストについては、医師によっては積極的に行わないことがあります。患部をかえって悪化させる可能性があるという理由からです。もっとも、これらの所見はむち打ち症を評価してもらう上で重要ですので、医師の意見を訊いて可能であれば行ってみたほうがよいでしょう。

(3)四肢腱反射検査

医師がハンマーにより腕の腱(骨に付着する筋肉)に刺激を加え、これに対する反射の有無を検査する四肢腱反射検査という方法があります。
反射は患者の意思とは無関係であるため、反射に異常がある場合、神経の異常を示す有意な所見となります。
上腕二頭筋反射、上腕三頭筋反射等のテストがあります。

(4)徒手筋力検査

筋力が低下しているかを検査するために、患者に腕の力を入れて屈曲させて、医師が逆の方向に力を加えて抵抗の程度を見る徒手筋力検査という方法があります。
Manual Muscle Testと呼ばれ、カルテ上は「MMT」と略されることが多いです。5段階で評価され、数字が低いほど筋力の低下の度合いが高いということになります。
また、握力の減少が生じているか調べるために、握力計を用いて握力を計測することがあります。
ただ、このあたりの検査は患者の意思によって操作することが可能になってしまうため、補助的な評価となるでしょう。

(5)画像診断の種類と方法

交通事故の場合、ほとんどのケースで最初にレントゲン(X線撮影)を撮影します。
このレントゲンでは、頚部の骨折や脱臼など骨傷があるかについて主に利用されます。また、骨棘(こつきょく)という、「骨のトゲ」の有無についても確認することができます。
椎間板や靭帯などはX線に写らないため、基本的にはMRIによることになりますが、X線でも頚椎の配列のズレなどの状態からこれらの損傷を読み取る方法もあります。
また、X線を通さない「造影剤」を使用して撮影して検査する脊髄造影(ミエログラフィー)、椎間板造影(ディスコグラフィー)などの検査方法があります。
他方で、MRIは、強力な電磁波で身体の水素原子の反応を検出するもので、椎間板ヘルニアなど頚椎の変性を調べる手段として役に立ちます。MRIは被曝がないため、その点においては身体に負担がないメリットがあります。
通常の街の整形外科ではレントゲン機器は置いていますが、MRIに関しては必ずしも置いてあるとは限りません。
その場合、紹介状により大病院でMRIを使用して撮影し、撮影データを主治医が読み取って診断を下すことになります。

医師の診察を受けるときの注意点

(1)痛みの頻度や程度、状態については正確に伝えよう

むち打ち症で争いになるケースでよくあるのが、「天気が悪いと痛くなる」、「寒くなると痛くなる」といったカルテの記載です。
裏を返せば、普段は痛くないのかと捉えられてしまい、程度としてたいしたことがないと捉えられてしまいがちです。
そのため、常時疼痛があるケースなどでは、医師にその旨も伝え、天気が悪いと特に痛くなると伝えた方がより正確に評価されます。
また、医師から患部を圧されたときに痛みを訴えると「圧痛+」とカルテに記載されることがありますが、これもやはり圧迫がなければ痛みがないのかと逆推されてしまうため、注意が必要です。

(2)MRIなどの画像所見が正しく評価されているか確認しよう

MRIを撮影すると、それを見て医師が椎間板ヘルニアの有無、頚椎の変性などについて説明をします。
それらが診断書上できちんと記載されるようにお願いをしましょう。
また、判断が悩ましい画像所見であれば、さらに高精度のMRIで撮影する方法も考えられます。
MRIはテスラという磁力の単位が一つの目安になりますが、1.5テスラで撮影されていた場合、3.0テスラのMRIで撮影すればさらに高精細の画像が撮影することができます。

痛みやしびれが治らない場合は、後遺障害等級認定の申請へ

治療を続けても、どうしてもよくならない場合は症状固定(治療終了)して、残存症状について後遺障害の等級を認定してもらう手続に移行します。

むちうち症で後遺障害の等級を獲得する場合、主に次の2つのケースがあります。

1つ目は、14級9号 「局部に神経症状を残すもの」

2つ目は、12級13号 「局部に頑固な神経症状を残すもの」

これらのいずれかの等級獲得を目指すことになりますが、これらの二つの違いとしては、簡単にいえば、「レントゲンやMRIなどの画像上、症状が説明できるか」ということになります。
症状が説明できれば12級、説明できないが回復困難な症状が残っていると判断されれば14級ということになります。

自覚症状のみのむち打ち症でも、認定で結果が分かれることがあります。
一方は14級で評価され、一方は非該当というようなことがあります。

後遺障害を評価する機関である自賠責保険料率算出機構では、認定の際にみるポイントがいくつかあるように思われます。
そうしたポイントを抑えながら、後遺障害申請を行い、正当に評価してもらうことが大切です。
このあたりのノウハウがある弁護士をはじめとする専門家に相談して、医証を集め、後遺障害等級認定で評価してもらうようにしましょう。

後遺障害等級は自賠責保険料率算出機構の調査事務所が認定しますが、時期によって評価が厳しかったり、緩かったりします。おそらく評価要素が変化している部分があるのではないかと思います。
弊所ではむち打ち症の多数の案件について、非該当からの異議申立てで等級を獲得してきた実績とノウハウがあります。等級獲得の可能性があるかまずは知りたいという相談だけでも結構ですので、現在のあなたの状況を教えてください。


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